法律の資格は、やりたい仕事と受験条件から選ぼう。
法律系資格には、法律の基礎知識を学ぶ検定から、不動産取引、許認可、労務、登記、知的財産などの専門業務に関わる国家資格まであります。
選ぶときは、まず「何のために法律を学びたいか」を決めましょう。不動産取引なら宅建士、人事・労務なら社会保険労務士、登記なら司法書士というように、資格によって専門分野が異なります。仕事で使う法律知識を身につけたい人には、ビジネス実務法務検定試験なども候補になります。
この記事では、代表的な8つの資格・検定・法曹へのルートを、仕事内容、受験資格、合格後の手続きで比較します。難しい資格から順に並べるのではなく、自分の目的に合う選び方を確認していきましょう。
法律系資格の一覧と違い
最初に、主な違いを一覧で見てみましょう。「試験を受けられる条件」と「資格者として仕事をする条件」は別のものです。
| 資格・検定ルート | 主な分野・学ぶ内容 | 受験資格の概要 | 合格後に確認すること |
|---|---|---|---|
| ビジネス実務法務検定試験 | 企業活動で必要となる法律知識 | 学歴・年齢等の制限なし。2級からの受験も可能 | 知識を評価する検定。合格によって独占業務が与えられるものではない |
| 法学検定試験 | 憲法・民法・刑法などの法律学 | 受験資格の制限なし | 知識・能力を評価する検定。学習段階に合うコースを選ぶ |
| 宅地建物取引士(宅建士) | 不動産取引の重要事項説明など | 日本国内に居住。年齢・学歴等の制限なし | 資格登録と宅地建物取引士証の交付が必要 |
| 行政書士 | 許認可などの申請書類、権利義務・事実証明に関する書類 | 年齢・学歴等の制限なし | 行政書士として業務を行うには登録が必要 |
| 社会保険労務士(社労士) | 労働・社会保険の手続き、人事・労務 | 学歴、実務経験、所定の試験合格などの要件あり | 所定の実務経験または事務指定講習などの要件を満たして登録 |
| 司法書士 | 不動産・商業登記、裁判所提出書類の作成など | 年齢・学歴等の制限なし | 司法書士として業務を行うには登録・入会が必要 |
| 弁理士 | 特許・意匠・商標などの知的財産 | 年齢・学歴等の制限なし | 試験合格ルートでは実務修習の修了と登録が必要 |
| 弁護士などの法曹を目指す司法試験ルート | 法律相談、訴訟などの法律実務 | 法科大学院修了、予備試験合格、一定の要件を満たす法科大学院在学中受験 | 司法試験合格後に司法修習・考試など。弁護士として働くには弁護士登録も必要 |
※各制度の代表的な試験合格ルートを簡略化しています。受験資格、登録の欠格事由、免除・特例、司法試験の受験期間などには個別の規定があります。詳しくは以下の各資格の公式案内を確認してください。
「法律系資格」は、ここでは法律を主な学習対象とする資格・検定をまとめた呼び方です。国家資格と民間の検定では目的が違うため、同じ物差しで優劣を決める必要はありません。
目的別に選ぶ法律系資格
仕事で使う法律知識を学ぶならビジネス実務法務検定試験
契約や取引、会社と従業員の関係など、企業活動に関わる法律を学びたい人は、ビジネス実務法務検定試験を候補にできます。営業、総務、人事など、今の仕事で法的な問題に気づくための基礎を学びたい人にも検討しやすい内容です。
3級は基本的な法律実務知識を扱います。初めて学ぶ人は、まず3級の出題範囲や公式テキストを確認するとよいでしょう。すでに学習経験がある人は2級から受験することもでき、順番に合格することは必須ではありません。
この検定の合格は、弁護士などの資格に代わるものではありません。自分で判断してよいことと、専門家に相談すべきことを整理するための学習として考えると、目的が明確になります。
出題範囲・受験資格の出典:東京商工会議所の試験要項
法律学の基礎を体系的に学ぶなら法学検定試験
法律そのものに興味がある人や、大学などでの学習内容を確かめたい人には、法学検定試験が候補になります。
ベーシック〈基礎〉コースでは、法学入門、憲法、民法、刑法の基礎を扱います。そのほかにスタンダード〈中級〉、アドバンスト〈上級〉があり、現在の理解度に合わせて選べます。受験資格の制限はありません。
主催は、日弁連法務研究財団と商事法務研究会が共同で組織する法学検定試験委員会です。法律学の知識・能力を評価する試験であり、合格だけで特定の法律業務を行えるようになるわけではありません。
制度・出題内容の出典:法学検定試験の公式案内
不動産取引に関わりたいなら宅地建物取引士
不動産の売買や賃貸借に関わる仕事を考えている人は、宅建士の仕事内容を確認してみましょう。宅建士は、宅地建物取引業法に基づく重要事項の説明などを担います。
注意したいのは、不動産会社のすべての職種で宅建士資格が必要なわけではないことです。また、宅建士の資格を取得することと、宅地建物取引業を営むための免許を取得することも別です。求人を見るときは、応募する仕事で資格が必須なのか、歓迎条件なのかまで確認しましょう。
日本国内に居住していれば、年齢・学歴等に関係なく受験できます。ただし、試験合格だけで宅建士として業務を行えるわけではなく、資格登録と宅地建物取引士証の交付が必要です。登録に必要な実務経験が2年に満たない場合は、登録実務講習を修了する方法があります。
制度の出典:国土交通省の宅地建物取引業法に関する案内、不動産適正取引推進機構の宅建試験概要、合格後の登録手続き、取引士証交付までの手続き、宅地建物取引業の免許制度
許認可や書類作成を支援したいなら行政書士
事業や暮らしに関する行政手続きを支援したい人は、行政書士を検討できます。官公署に提出する許認可等の申請書類や、権利義務・事実証明に関する書類の作成などが主な分野です。
扱う分野は幅広いものの、法律に関わる仕事を何でもできる資格ではありません。他の法律によって制限される業務もあるため、将来扱いたい手続きが行政書士の業務範囲に含まれるか確認することが大切です。
試験は年齢・学歴・国籍等に関係なく受験できます。行政書士として業務を行うには、試験合格などにより資格要件を満たしたうえで、日本行政書士会連合会の行政書士名簿への登録が必要です。
独立を目指すなら、試験の学習と並行して「どの分野で、どのような依頼者を支援したいか」を考えておきましょう。
制度の出典:日本行政書士会連合会の業務案内、登録手続き、行政書士試験研究センターの受験案内
人事・労務の専門性を高めたいなら社会保険労務士
労働・社会保険の手続きや、人事・労務管理を専門にしたい人には、社労士が候補になります。現在の人事・総務の仕事と学習内容を結びつけたい人も、まず業務内容を確認するとよいでしょう。
社労士試験には受験資格があります。学歴、実務経験、厚生労働大臣の認めた国家試験合格など、定められた要件のいずれかを満たす必要があります。行政書士試験の合格も受験資格の一つですが、すでに別の要件を満たしていれば、行政書士を先に取得する必要はありません。
また、受験資格と合格後の登録要件は別です。社労士として登録するには、原則として所定の実務経験2年以上、またはそれに代わる事務指定講習の修了などが必要になります。
制度の出典:社労士試験の受験資格、全国社会保険労務士会連合会の資格取得・登録案内
登記や裁判所提出書類に関わりたいなら司法書士
不動産登記や会社の商業登記、裁判所に提出する書類の作成などに関心がある人は、司法書士を検討できます。
法務大臣の認定を受けた司法書士は、簡易裁判所で扱う訴額140万円以下の民事訴訟の代理なども、法律で定められた範囲内で行えます。司法書士なら誰でも、あらゆる裁判の代理人になれるわけではありません。
試験は年齢・学歴等に関係なく受験できます。行政書士や宅建士の取得は受験の前提条件ではないため、登記の専門家を目指すことが決まっているなら、司法書士試験に向けた学習から始める選択肢もあります。資格者として業務を行うには、合格後に登録・入会等の手続きが必要です。
制度の出典:日本司法書士会連合会の業務案内、試験情報、登録・入会に関する案内
特許や商標などに関わりたいなら弁理士
発明、製品のデザイン、商品やサービスの名称など、知的財産に関わる仕事をしたい人は弁理士を検討できます。特許・実用新案・意匠・商標などの出願手続きの代理や、知的財産に関する相談などを扱います。
弁理士試験に学歴・年齢・国籍等の制限はなく、理系の学位が受験条件になっているわけではありません。目指す分野を考える際には、法律の学習内容に加え、関心のある技術や事業との接点も見てみましょう。
試験合格ルートでは、合格後に実務修習を修了し、日本弁理士会に登録する必要があります。
制度の出典:特許庁の弁理士試験Q&A、日本弁理士会の業務案内
弁護士・裁判官・検察官を目指すなら司法試験の制度を確認する
訴訟や法律相談などの法律実務を担う弁護士、裁判官、検察官を目指す人は、司法試験の受験ルートから確認しましょう。この三つを法曹三者と呼びます。
現行の司法試験には、主に次の受験資格があります。
- 法科大学院の課程を修了していること
- 司法試験予備試験に合格していること
- 法科大学院に在学し、所定の単位修得や修了見込みについて学長の認定を受けていること
受験可能な期間等にも規定があるため、個々の条件は法務省の最新案内で確認してください。
司法試験に合格した後にも、司法修習とその最終試験である司法修習生考試などの段階があります。弁護士として働くには弁護士登録が必要で、裁判官・検察官についてもそれぞれの採用手続きがあります。司法試験合格だけで直ちに法曹三者として働き始めるわけではありません。
また、司法書士や行政書士などを順番に取得することは、司法試験受験の必須ルートではありません。法曹を目指す目的が明確な人は、受験資格を得るまでの期間・費用も含めて計画を立てましょう。
制度の出典:法務省の司法試験Q&A、在学中受験資格のQ&A、裁判所の司法修習案内、弁護士法
法律系資格を選ぶ前に確認したい3つのこと
1 受験できることと仕事を始められることを分ける
「受験資格なし」と書かれていても、試験合格後の手続きまで不要という意味ではありません。登録、実務経験、講習・修習、資格者証の交付など、必要な手続きは資格ごとに異なります。
試験対策の費用だけでなく、合格後に必要となる費用や期間も調べておくと、計画を立てやすくなります。登録料や会費などは、各団体・都道府県等の最新案内で確認しましょう。
2 難易度は合格率だけで決めない
合格率だけを見て、別々の資格の難しさを一列に並べると判断を誤りやすくなります。受験資格、受験者の学習経験、試験科目や出題形式が異なるからです。
自分に合うかを考えるときは、次の順に確認しましょう。
- 公式の出題範囲と公開問題、または公式問題集を見る
- 初めて学ぶ分野と、今の仕事・学習で知っている分野を分ける
- 記述・論文・口述など、必要な対策を確認する
- 週に確保できる学習時間と、受験予定時期を照らし合わせる
必要な学習期間には個人差があります。「誰でも短期間で合格できる」「最低でも何年かかる」といった一律の目安よりも、自分の現在地と試験内容を確かめることを優先してください。
3 就職・転職や独立の条件を先に調べる
資格を選ぶ前に、希望する仕事の求人票をいくつか確認しましょう。資格が必須なのか、合格者でも応募できるのか、実務経験やほかのスキルも必要なのかが分かると、学習の優先順位を決めやすくなります。
独立を目指す場合は、扱いたい業務の範囲、実務を学ぶ方法、依頼者との接点、開業後の費用まで考える必要があります。資格を取得しても、仕事の依頼や一定の収入が保証されるものではありません。
複数資格を目指すかどうかも、実際に必要な仕事から判断しましょう。資格の数を増やすこと自体を目標にせず、一つ目の資格をどう使うかが見えてから次を検討する方法もあります。
公認会計士や公務員試験も法律系資格に入るのか
会計・税務や行政の仕事でも法律知識を使いますが、資格・試験の目的は同じではありません。
公認会計士は監査・会計の専門資格です。会計や企業の財務情報に関心がある人は、法律系資格の順位表に当てはめるよりも、仕事内容から別途比較するとよいでしょう。
また、公務員試験は職員を採用するための試験です。従来の国家Ⅰ種・Ⅱ種等は現行の試験名ではありません。行政の仕事を目指す人は、総合職・一般職など、現在の採用試験の区分と受験条件を確認してください。
公式案内:日本公認会計士協会の仕事内容案内、人事院の国家公務員採用試験一覧
独学と通信講座はどう選ぶ
目指す資格を決めたら、次に学習方法を選びます。講座を先に契約するのではなく、受験資格、試験範囲、受験予定時期を確認してから比較しましょう。
| 学習方法 | 検討するときのポイント |
|---|---|
| 独学 | テキストや問題集の説明を自分で理解できるか。学習計画、法改正情報の確認、疑問点の解決を自分で進められるか |
| 通信講座 | 講義の説明が自分に合うか。質問・添削の対象と回数、教材、受講期限が必要な範囲をカバーしているか |
| 通学講座 | 通える曜日・時間・場所か。欠席時のフォローや、仕事・家事等との両立が可能か |
通信講座や通学講座を比較する際は、表示価格だけでなく、必要な教材・模試・質問サポートなどを含む総額で見てください。合格特典、返金制度、割引には条件があるため、適用対象や申請方法も確認が必要です。
サンプル講義や教材見本がある場合は、実際に見て、説明を理解しやすいか確かめてから判断しましょう。合格実績を比較するときも、対象者・集計期間・集計方法を確認し、数字だけで決めないことが大切です。
法律系資格に関するよくある質問
法律を初めて学ぶ人はどの資格から始めればよいですか
学習そのものが目的なら、ビジネス実務法務検定3級や法学検定ベーシックの出題範囲を見て、興味のある方を選ぶ方法があります。就きたい仕事が決まっている人は、その仕事に関わる資格を直接目指すこともできます。全員に共通する取得順序はありません。
法学部を卒業していなくても受験できますか
この記事で紹介した検定、宅建士、行政書士、司法書士、弁理士には、法学部卒業という受験条件はありません。一方、社労士と司法試験には個別の受験資格があります。「法学部出身かどうか」だけで判断せず、自分がどの要件に該当するかを公式案内で確認してください。
国家資格を選べば就職や独立に有利ですか
資格が必須となる業務を目指す場合は、必要な資格の取得が重要です。ただし、採用条件や仕事の獲得には実務経験、業務知識、希望する働き方なども関係します。国家資格という区分だけで選ばず、希望する仕事とのつながりを確認しましょう。
宅建士から行政書士、社労士、司法書士の順に取る必要はありますか
その順番に取得する必要はありません。それぞれ専門分野も受験条件も異なります。たとえば社労士は、すでに受験資格を満たしていれば行政書士試験の合格を経ずに受験できます。司法書士にも、ほかの資格を先に取得するという受験条件はありません。
まずは目的に合う候補を一つに絞ろう
法律系資格を選ぶときは、「何ができる資格か」「自分は受験できるか」「合格後に何が必要か」の順に確認しましょう。
まだ仕事の方向が決まっていなければ、基礎を学べる検定の教材を見てみる。希望する仕事があるなら、その仕事に関わる資格の公式試験案内と求人票を読む。このどちらかから始めると、次に必要な行動が見えてきます。
候補を決めた後に、学習時間と予算に合う独学・通信・通学の方法を比較してください。
法律系資格のピラミッド構造
どの資格を法律資格というカテゴリーに含めるかは難しい問題があります。例えば、会計資格の最高ランクに位置づけられる公認会計士も一部法律科目が出題されますので法律資格に含めてもよさそうです。
そうやって厳密に考えるとキリがないので、ここでは代表的な法律資格だけをピックアップしてピラミッド構造にしてみました。
参考にして下さい。
※本記事の制度に関する情報は2026年10月2日に確認しています。試験日程、受験料、受験・登録要件などは変更されることがあるため、申込み前には必ず各実施団体の最新案内を確認してください。



