定年退職後から本当に大切な仕事ができる

定年退職した後も、まだまだ元気なシニア世代。本当に有意義な仕事ができるのはこれから。
定年退職後の第2の人生で、これまでの経験を活かして仕事を続けたり、新しい分野に挑戦したりする。そんな過ごし方もいいですよね。
退職後は、ゆっくりと余暇の時間を楽しみたいという人もいるでしょう。一方で、60歳、70歳になっても、若い人が驚くくらい元気に仕事を続けている人もいます。体力や生活の事情は人それぞれですが、自分のペースで取り組める仕事や学びを見つけたいものです。
生活費を補うために働きたい。今まで身につけたことを誰かの役に立てたい。現役時代には時間がなくてできなかった勉強を始めたい。定年後にもう一度動き出す理由は、1つではありません。
例えば、ライフネット生命の創業者である出口治明さんは、60歳だった2008年に、社長として同社の開業を迎えました。還暦の頃から新しい会社づくりに挑むなんて、凄いですよね。大きな事業を始めるかどうかは別として、年齢だけで自分の可能性を決めなくてもよいのだと思います。
ということで、今回は、現役時代の経験を活かしたい人にも、何か新しいことにチャレンジしたい人にもおすすめの資格を紹介します。
最初に考えておきたいのは、資格を取った後に、何をしてみたいかということです。再就職、独立、地域での活動、趣味や暮らしのための勉強では、選ぶ資格も準備の仕方も変わります。難しい資格や有名な資格から選ぶより、自分が使ってみたい場面を思い浮かべながら読んでみてください。
現役時代の経験を活かせる資格

中小企業診断士は、現役時代の経験とスキルを活かせるのが魅力。中小企業の経営を診断し、助言する専門家の国家資格です。
現役時代に、バリバリ活躍していた人は、その経験やスキルを活かせる資格を取ることがおすすめです。
例えば、中小企業診断士です。中小企業診断士は、名前からも想像できると思いますが、中小企業の経営状況などを分析して、アドバイスするなど、経営コンサルタントとしての仕事をします。
若い人たちが起業する時に、やる気と情熱はあるけど経験や実績がないということがよくあります。
そういう中小企業がうまく成長していくように、一緒に戦略を練ったり、今までの経験を生かしてアドバイスするなど、裏方的な仕事にはなりますが、大変やりがいのある仕事です。
営業をしてきた人なら販路づくり、製造業にいた人なら現場の改善、経理を担当していた人なら数字から経営を考えること。これまで当たり前にやってきたことが、別の会社では役立つ場合もあります。まずは、自分がどんな相談に応えられそうか、書き出してみるとよいでしょう。
世の中にはコンサルタントと名乗る人がたくさんいますが、中小企業診断士は、中小企業支援法に基づく登録制度がある国家資格です。
コンサルタントという仕事をするのに資格は必要ありませんが、中小企業診断士の資格を取得しようと勉強することによって、経営全体を体系的に学ぶことができます。
自分の経験とスキルだけに頼る場合、どうしても自分が経験したことに関しては強いのですが、それ以外の分野に関しては弱く、ムラができてしまいます。
資格試験に合格することを目標とすることで、全体を満遍なく体系的に学び、知識の穴を埋めることができます。また、国家資格を持っていることは、自分が学んできた内容を相手に伝え、信頼を築くための材料にもなります。
ただし、試験に合格しただけで、すぐに中小企業診断士として登録できるわけではありません。試験合格ルートでは、第2次試験合格後3年以内に、実務補習や診断・助言の実務など、15日以上の所定の実務要件を満たして登録申請する必要があります。勉強の時間だけでなく、合格後に実務を学ぶ時間や費用も見込んでおきましょう。
第1次試験には年齢・学歴等の受験制限はありません。一方、出題範囲は幅広いので、「仕事の経験があるから簡単」とは考えず、公開問題を見て、得意な科目と初めて学ぶ科目を確かめておくことが大切です。2026年度からは第2次試験の口述試験が廃止されています。試験内容や日程、費用の詳しい説明は、上の中小企業診断士のページで確認できます。
独立するなら、資格の勉強と並行して、支援したい業種や得意にしたいテーマも考えてみてください。資格に現役時代の経験を組み合わせることで、自分らしい仕事の形が見えてくるはずです。
次は、何か新しいことにチャレンジしたいという人におすすめの資格です。
新しい事にチャレンジするための資格
現役を引退したのだから、ちょっと気持ちを入れ替えて何か新しいことにチャレンジしたいという人も多いはず。
そんな人におすすめなのがITパスポートです。ITに関する基礎知識を幅広く学べる国家資格で、IT系資格の入門的・登竜門のような位置づけです。
ITパスポートは、パソコンスクールなどで習うパソコンの基礎的な使い方、ワードやエクセルの使い方などとは違い、コンピュータやインターネットなどの技術的な基礎知識を学習することができます。情報セキュリティに加え、企業活動やITを使った仕事の進め方なども学習範囲に含まれます。
なお、ITパスポートは、2009年度の試験制度改編で始まった試験です。以前の初級システムアドミニストレータ試験の名前だけが変わったものではありません。古い教材を使う時には、この点にも気をつけてください。
「いつも使っているパソコンが、どのような仕組みで動いているのか知りたい」「インターネットを、もう少し安心して使えるようになりたい」。そんな身近な興味から始めてもよいと思います。
そして、目標を立てるというのが非常に大切だと思います。何かに興味を持ち学習したいと思っても、具体的な目標がなければ行動に移すことは難しいものです。
期限を定めて目標を決めることで、具体的な行動に移すことができます。その1つとして資格試験に合格するという目標を立てるのは大変効果的です。
その目標に向かって学習しているうちに、全体を体系的にモレなく学ぶことができます。「今週はこの章まで読んでみよう」「間違えた問題をもう一度解いてみよう」と、小さな目標も決めておくと、勉強を始めやすくなります。
ITパスポートの学習で得た知識に、実際の操作経験を組み合わせれば、コンピュータが苦手な方に教える時にも役立ちます。何より、自分自身がコンピュータとインターネットを使って豊かな生活を過ごすための土台になるのが魅力です。
例えば、地域の活動で名簿を管理する、写真を整理する、オンラインで情報を集める。そうした日常の作業と結びつけてみると、勉強した内容が身近になります。ワードやエクセルを使う仕事が目的なら、試験勉強とは別に、書類や表を実際に作る練習もしておきましょう。
人に教えることが好きなら、地域のパソコン講座を手伝ったり、将来は教室を開いたりすることも、1つの目標になるかもしれません。その場合には、操作の知識だけでなく、相手に合わせて説明する力や、どんな困りごとに応える教室にするかを考えることも必要です。
試験は会場のパソコンで受けるCBT方式です。画面で問題を読むことに不安がある人は、受験前に公式の操作説明や体験画面を確認しておくとよいでしょう。教材も、文字の読みやすさや説明のわかりやすさを確かめてから選ぶのがおすすめです。
2026年10月6日時点では、システム更新に伴う12月28日以降の試験休止が案内されています。会場によっては、それより前に休止する場合もあります。受験日を決める前に、IPAの試験実施に関するお知らせを確認してください。2027年度からの試験制度の見直しも予定されているため、教材が受験する時期の試験に対応しているかも確かめましょう。
資格を取る3つのメリット

国家資格を取得することのメリットはたくさんあります。
他にもシニアにおすすめの資格は、行政書士、社労士、マンション管理士など、たくさんあります。
行政書士は、許認可の手続きや書類作成などに関心がある人の候補です。試験は年齢・学歴等に関係なく受けられますが、行政書士として仕事をするには、合格後に登録・入会などの手続きが必要です。現役時代に関わった業界を入口に、どんな手続きや相談を扱いたいか考えると、学習の目的も具体的になります。他の法律で制限される業務まで行えるわけではないので、業務の範囲も確認しておきましょう。
人事や総務の経験を活かしたい人なら、社会保険労務士、いわゆる社労士も候補になります。労働・社会保険の手続きや人事労務の相談などを扱う資格です。ただし、学歴、実務経験、所定の国家試験合格などによる受験資格があります。また、試験合格後の登録では、原則として2年以上の所定の実務経験、または事務指定講習の修了等が必要です。「受験するための条件」と「登録するための条件」を分けて、上の社労士のページで確認してみてください。
マンション管理士は、管理組合の運営や建物の管理について、相談に応じ、助言する専門家です。マンションの理事を経験した人や、住まいの管理に関心がある人には、身近な問題と結びつけて学べる面白さがあります。試験は年齢・学歴等に関係なく受けられますが、マンション管理士を名乗るには、合格後に登録が必要です。マンションの管理員として働くことや、管理業務主任者の資格とは、それぞれ仕事や制度が異なります。
このほか、不動産取引の仕事に関心があるなら宅地建物取引士(宅建士)も比較してみるとよいでしょう。宅建士として重要事項説明などを行うには、試験合格に加えて資格登録と宅建士証の交付が必要です。営業や物件案内を担当するのか、契約事務を中心にするのかなど、希望する仕事の中身まで見ておくことが大切です。
暮らしのお金について学びたい人には、ファイナンシャル・プランニング技能検定(FP技能検定)の3級から取り組む方法もあります。年金、保険、税金、相続などの基本的な仕組みを学び、専門家に相談する時の疑問を整理するのにも役立ちます。国家検定のFP技能士と、AFP・CFPの認定資格は別の制度です。資格を取れば自由に税務相談などができるわけではありません。なお、日本FP協会の2級・3級は現在、学科・実技とも原則CBT方式で、両方の合格が必要です。受検条件や日程、費用は、受検する団体の最新案内を確認してください。
このサイトでは、たくさんの資格を紹介していますので、いろいろと見て興味を持てる資格を探してみてください。
最後に、国家資格を取得することのメリットを、3つに分けて紹介しておきます。
1 学んできたことを示し、信頼につなげられる
世間では、資格なんて必要ないと言う人もいます。確かに、実力があれば資格がなくてもできる仕事はあります。それでも、自分が何を学び、どのような知識を身につけてきたかを伝える時には、資格が役立ちます。
まず、資格を取得していることが信頼につながる。これが多くの人が考える資格取得のメリットでしょう。
特に、新しい相手と仕事をする時には、資格だけでなく、現役時代に担当した仕事や、実際に解決してきた課題も一緒に伝えたいところです。経験と学びの両方が伝われば、相談する側も、どんなことを頼める人なのかを考えやすくなります。
2 経験だけでは埋まらなかった知識を補える
資格を取得することのメリットは、肩書きを持てることだけではありません。中小企業診断士やITパスポートのところでも紹介したように、試験という目標があることで、全体を体系的に学びやすくなります。
今まで何となくやっていた仕事の理由がわかったり、苦手だと思っていた分野が少しずつ理解できるようになったりする。現役を引退した後だからこそ、仕事で必要なところだけに追われず、興味のあることを掘り下げる楽しさもあるはずです。
学んだことを暮らしや地域の活動に活かすなら、すぐに収入につながらなくても、勉強した意味は十分にあります。
3 学びや仕事を通じて、人とのつながりが生まれる
例えば、行政書士や社労士として登録して仕事をする場合には、所属する都道府県の会への入会が必要になります。ただし、すべての国家資格で団体への加入が義務になるわけではありません。
このような団体の研修や活動に積極的に参加することで、人のつながりが生まれます。様々な情報を得たり、実務について学んだり、同じ分野の人と意見を交換したりする機会にもなるでしょう。
所属する団体によっては、地域の相談活動や、業界共通の課題についての提言など、個人だけでは取り組みにくい活動に関われる場合もあります。仕事を紹介してもらうことだけを期待するより、自分も知識や経験を持ち寄って参加する気持ちが大切だと思います。
もちろん、資格の取得や団体への加入だけで、仕事の紹介、職員としての採用、収入が保証されるわけではありません。必要な会費や活動内容を確認し、自分がどのように関わりたいかを考えておきましょう。
気になった資格を、無理なく続けられる勉強につなげよう
興味を持てる資格が見つかったら、いきなり教材を一式そろえる前に、試験の内容と、自分の生活に合う学び方を確認してみてください。
仕事につなげたい人は、まず働きたい地域の求人をいくつか見てみましょう。資格が必須なのか、あれば歓迎されるのか。未経験でも応募できるのか。勤務日数や通勤時間は希望に合うのか。同じ資格でも、求人によって求められることは違います。独立を目指す人なら、誰のどんな困りごとを手伝いたいかを考えるところから始めるとよいと思います。
勉強から長く離れていた人は、最初の2週間だけ、1日30分ほど取り組んでみる方法もあります。これは合格までの標準的な勉強時間ではなく、自分が続けられるペースをつかむためのお試しです。公開問題やテキストの試し読みで、内容に興味を持てるか、説明が理解しやすいかを確かめましょう。
独学で進められそうなら基本書と問題集から、説明を聞いたり質問したりしながら進めたいなら通信講座や通学講座から、自分に合う方法を選べばよいのです。動画のサンプル、文字の大きさ、質問できる回数、受講期限なども見ておくと、買った後の「思っていたのと違う」を減らせます。
予算は、受験料と教材代だけで決めないことも大切です。仕事に使う資格の場合には、登録、実務講習、入会金・会費、開業準備などの費用がかかることがあります。「合格するまで」と「合格後に使うまで」に分けて書き出すと、無理のない計画を立てやすくなります。
受験できる条件、申込期間、試験会場、合格後の手続きは資格によって異なります。各資格の解説を入口に、申込み前には実施団体の当年度の案内も確認してください。受験にあたって配慮が必要な場合は、申込期限より前に相談しておくと安心です。
第2の人生を有意義に過ごすため、また、社会に貢献できる仕事をするために、行政書士などのいわゆる士業の国家資格を取得することもおすすめです。
これまでの経験を活かすのも、新しいことを学ぶのも、どちらも面白い挑戦です。まずは「この資格を取って、こんなことをしてみたい」という目標を1つ決めるところから、始めてみてはいかがでしょうか。


