日本で初めての心理専門職の国家資格が誕生
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心理系の日本初の国家資格「公認心理師」が誕生
公認心理師は、2018年より実施され始めた日本で初めての心理系の国家資格です。
公認心理師の国家資格化は約50年以上前から努力が行われており、それがようやく身を結んだ念願の資格です。
心理系の民間資格はたくさんありますが、やはり法律によって、実施・運営されている国家資格ということで、資格としての価値が高まり、国のあらゆる政策の中に公認心理師という心理専門職を組み入れやすくなります。
そのことで、国民が今までよりも心理専門職を活用しやすくなることができ、心のケアなどの心理的なサービスを受けやすくなることが期待されます。
今回は、この新しい心理の国家資格である「公認心理師」の今後の役割と課題をまとめました。
民間資格ではあるものの、今まで心理系の資格の筆頭として活躍してきた臨床心理士との比較もします。
公認心理師の特徴
公認心理師の特徴としては、1.基本的な養成課程が6年間である、2.領域横断的な資格である、3.関係者との連携が重視されている、4.業務として予防活動等が入ったこと、などです。
また、今後の公認心理師の課題は、1.公認心理師の資質の維持・向上、2.公認心理師の働き方、3.公認心理師の地域格差の解消、などです。
公認心理師について規定している公認心理師法は、2015年(平成27年)9月9日に議員立法により成立し、同年9月16日に公布され、2017年(平成29年)9月15日に施行されました。
これにより、日本で初めての心理専門職の国家資格が誕生したことになります。
初めての第1回公認心理師試験が2018年(平成30年)9月9日に実施され、同年11月30日に合格発表がありました。
合格後に公認心理師登録簿への登録がなされ、日本で初めての公認心理師が誕生しました。
実は、日本においては公認心理師の国家資格化への道は平坦なものではなく、長い年月と努力が必要とされました。
心理職の団体だけではなく、関係団体を含めた多くの団体が、議論を重ね、利益調整をしようやく心理専門職の国家資格化が実現したのです。
国家資格化によって何が変わるのか?
日本には民間資格ではあるものの、すでに臨床心理士という資格があり、多くの臨床心理士が様々な分野で活躍しています。
にもかかわらず、どうして国家資格としての公認心理師がさらに必要とされたのでしょうか?
その理由はたくさんありますが、最も重要な理由は、やはり国や地方自治体が行う政策に公認心理師を心理専門職として組み入れやすくなり、結果として国民が心理専門職を活用しやすくなるということです。
必ずしも民間資格よりも国家資格の方が価値が高いというわけではないのですが、国家資格は、やはり国が認めた資格という事で、認知度、信頼感、安心感が高まるという効果があります。
心理専門職の国家資格が登場したことで、国民が心理サービスを受けることへの心理的なハードルが下がり、心理的な支援を受けやすくなることが期待されます。
国や地方自治体が様々な政策を行なっていく上で、今までよりも公認心理師をその政策の中に組み入れやすくなり、国民が心理サービスを受けられる場所や機会が増えると考えられます。
国家資格は、民間資格と異なり、基本的に国民に必要とされているものが資格化されるため、国民の利益となるように法律や制度が整備されていくことになります。
公認心理師法が成立、施行された後の具体的な国の動きとしては以下のようなものがあります。
1.診療報酬上評価する心理職の範囲を公認心理師に統一するという方針が中央社会保険医療協議会より示された、2.スクールカウンセラー等活用事業実施要領が改正され、その選考対象として公認心理師が筆頭に掲載された、3.労働安全衛生規則が改正され、企業のストレスチェック実施者に「必要な研修を受けた公認心理師」が追加された、4.児童相談所運営指針が改正され、児童相談所における児童心理司の任用資格に公認心理師が追加されたこと、5.障害児施設の心理指導担当職員配置加算の実施要領が改正され、福祉型または医療型障害児入所施設で働く心理指導担当職員について公認心理師の資格を有する者が望ましい旨が記載されたことなど。
様々な分野で改正がなされ、公認心理師の名前が追加されてきており、公認心理師の活躍が大きく期待されています。
今後は、臨床心理士よりも公認心理師が心理専門職の中心的な役割を果たしていくことは間違いありません。
これから心理の専門職として仕事をしていこうと考えている人は、まず公認心理士の資格取得を目指すことをおすすめします。
公認心理師法第1条は、公認心理師法の目的として「国民の心の健康の保持増進に寄与することを目的とする」と定めています。
また、第2条で公認心理師の業務内容として以下の4つを規定しています。
心理学に関する専門的知識及び技術をもって、1.心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること、2.心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。3.心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと、4.心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。
実は、これらの目的や業務はこれまで臨床心理士が担ってきたものとそれほど大きな差はありません。
では、臨床心理士と異なり、公認心理師にはどんな特徴があるのでしょうか?それをこれから説明していきます。
公認心理師の受験資格を得る方法はいくつかありますが、主となるのは大学学部4年(学士)プラス大学院2年(修士)の合計6年間の課程を修了する事です。
大学、大学院、それぞれの在籍期間中で必修科目指定されている科目があり、それらを修了した上で卒業または修了することで公認心理師の受験資格を得ることができます。
その中で、注目すべき科目は大学の学部で学ぶ「人体の構造と機能及び疾病」「精神疾患とその治療」「関係行政論」です。
これらの科目は、臨床心理士の養成課程では必修となっていなかったものですが、公認心理師では必修化されました。
臨床心理士は「目に見えない心理的側面ばかりを優先しすぎている」と批判されている事がありましたが、その批判を避け、公認心理師は心理的側面だけでなく生物心理社会の視点をもってクライアントを評価することが求められていると考えられます。
また、法律や制度の背景を理解しながら業務を遂行することも求められています。
公認心理師法第2条では、「保健医療、福祉、教育その他の分野において」と規定されており、保健医療領域に限定された資格ではなく、汎用性のある領域横断的な資格であるという特徴があります。
保健医療、福祉、教育、司法・犯罪、産業・労働の5分野は主要5分野と呼ばれており、臨床心理士の勤務領域はそれらの5分野だけで70%以上を占めています。
公認心理師の勤務領域も最初のうちは臨床心理士と同じような割合になると予想されますが、割合の少ない領域で今後公認心理師の活躍の場が広がることが期待されます。
公認心理師法42条には「公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない」と規定されています。
公認心理師は様々な専門家や関係者と連携協働して、クライアントをチームの1人として支援することが期待されています。
心理面接などの個別的な支援も含めて、すべてチームによる支援の一環であると考えられます。
公認心理師法で、このことが明文で規定されたことは意義が深いでしょう。
公認心理師法2条4号には、公認心理師の業務として「心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと」が規定されています。
これは健康な人に働きかける予防活動、健康増進活動を含んでいます。
このことにより、臨床心理士ではクライアントの対象が心理的なケアを必要としている人だったのが、公認心理師ではクライアントの対象がすべての国民にわたることが明確になりました。
公認心理師には、国民の心の健康の保持増進、予防に貢献することが望まれています。
今後の公認心理師の課題
公認心理師法43条には、「公認心理師は、国民の心の健康を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に対応するため、2条各号に掲げる行為に関する知識及び技能の向上に努めなければならない」と規定されており、公認心理師には自らの資質を向上させる責務があることが明文で定められています。
公認心理師が心理専門職として、国民の負託にこたえるためには常に最新の知識・情報に触れ、努力研鑽することが求められるのは当然のことでしょう。
ただ、法律で規定されていると言っても、具体的にどれくらい努力をすればいいかというのは、不明確なので、公認心理師がそれぞれに自ら資質を向上させるような制度作りが今後求められます。
公認心理師という心理専門職の国家資格が誕生したことで、労働条件や勤務形態など働き方に変化が現れる可能性があります。
臨床心理士の勤務形態として最も多いのが「非常勤のみ(44.7%)」です(一般社団法人日本臨床心理士会の臨床心理士の動向調査より)。
常勤が必ずしも好待遇というわけではありませんが、やはり非常勤という勤務形態は不安定であり、また、その不安定さが故に自分の素直で率直な意見が言いづらいという環境にあります。
公認心理師の国家資格化により、このような働き方が変わっていく可能性に期待したいところです。
地域格差の解消
資格保有者が都市部に集中していて、国民の福祉に地域格差が生まれるという状況は、様々な業種で顕著になっています。
この都市部集中という状況は、臨床心理士でも同様で、日本臨床心理士会の会員数は2018年5月末で21,123人であり、そのうち東京臨床心理士会の会員数は同年3月1日で4,780人となっており、臨床心理士全体の約22.6%が東京都に集中していることが分かります。
日本の全人口に対して東京都が占める割合は2015年の国勢調査によると約11%であり、これと比較しても、かなり高い割合になっていることが分かります。
これと同じ状況が公認心理師でも現れることが予想されます。
都市部以外の地方では、公認心理師の働く場所が少ないという問題や、研修会や勉強会の開催が都市部に集中しているという問題があるので、それが解消されるような環境づくりが今後望まれます。
国民が日本のどこに住んでいても、心理支援を受けられるような制度の整備が今後の課題になるでしょう。
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